ほろぎの聲
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長野々尻間河にのぞみて大樹おほし
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木曾人よあが田の稻を刈らむ日やとりて焚くらむ栗の強飯《こはいひ》
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妻籠《つまご》より舊道を辿る、溪水に襯衣を濯ぎて日頃の垢を流す、又巨巖の蓬を求めて蓙しきて打ち臥す、一つは秋天の高きを仰ぎ、一つは衣の乾く程を待つなり
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ゆるやかにすぎゆく雲を見おくれば山の木群のさや/\に搖る
冷けき流れの水に足うら浸で石を枕ぐ旅人われは
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馬籠《まごめ》峠を美濃に下る
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まさやかにみゆる長山美濃の山青き山遠し峰かさなりて
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十一日、釜戸より日吉といふ所へ越す峠に例の蓙をしきて打ち臥すに小き聲にて忙しく鳴く虫あり、日ごろも聞く所なり、蝉の小さなるものなりと或人いふ、ちつち蝉といふものにや、草のなかにあれば假に草蝉とよびて
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汗あえて越ゆるたむけの草村に草蝉鳴きて涼し木蔭は
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日吉より次月《しつき》というところへ越す
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