くりに花なりし菽の莢になりつゝ

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車の上にても暑さはげしきに、つくばの山にはノタリといふ雲のかゝりたるを見てちかく雨のふるならむと、少し腹に力もつきたることなれば身も心もいさましく
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筑波嶺のノタリはまこと雨ふらばもろこし黍の葉も裂くと降れ

     其三

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明治三十六年八月十日、熊野に入り那智にやどる、庭に彳めば谷を隔てゝ名に負ふ瀧のかゝれるもみゆるに、かうべをめぐらせば熊野の浦はる/″\として限りを知らず、をりしも月の冴えたる夜なりければ涼しさ肌にしみ透るやうに覺えて心地いふべくもあらざりき。ことしまた暑さに向ひて只管この山のすゞみを偲びてその夜のこころになりてよみける歌十首
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山桑の木ぬれにみゆる眞熊野の海かぎろひて月さしいでぬ

ぬばたまの夜の樹群のしげきうへにさゐ/\落つる那智の白瀧

こゝにしてまともにかゝる白瀧のすゞしきよひの那智山よしも

照る月を山かもさふる白瀧の深谷の木むれいまだみわかず

那智山は山のおもしろいもの葉に月照る庭ゆ瀧見すらくも

なちやまの白瀧みむと
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