波打ち來れば足揚《あげ》て避けつゝ
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平潟港即事
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松魚船入江につどひ檣に網《あみ》建て干せり帆を張るが如し
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九日午後になりて雨漸く收る、平潟に來てはじめて晴天なり
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天水のよりあひの外に雲收り拭へる海を來る松魚船
白帆干す入江の磯に松魚船いま漕ぎかへる水夫の呼び聲
きららかに磯の松魚の入日さしかゞやくなべに人立ち騷ぐ
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十日、干潟日和山
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群※[#「亞+鳥」、第4水準2−94−23]夕棲み枯らす松の上に白雲棚引く濱の高岡
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同關田の濱
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こゝにして青草の岡に隱ろひし夕日はてれり沖の白帆に
波越せば巖に糸掛けて落つる水落ちもあへなくに復た越ゆる波
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十一日、此日も關田の濱へ行く
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松蔭に休らひ見れば暑き日は浪の膨れのうれにきらめく
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此日平潟より南へわたる長濱といふ所の斷崖の上に立ちて
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蟠る松の隙より見おろせば搖りよる波はなべて白泡
枝交はす松が眞下は白波の泡噛む巖に釣る短人
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十二日、日立村へ行く、田越しに助川の濱の老松が見える
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松越えて濱の烏の來てあさる青田の畦に萱草赤し
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十三日、朝來微雨、衣ひきかゝげて出づ、平潟より洞門をくゞれば直ちに關田の濱なり
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日は見えてそぼふる雨に霧る濱の草に折り行く月見草の花
雀等よ何を求むと鹽濱のしほ漉す※[#「鹿/(鹿+鹿)」、第3水準1−94−76]朶の棚に啼くらむ
松蔭の沙にさきつゞくみやこ草にほひさやけきほの明り雨
松蔭は熊手の趾もこぼれ葉も皆うすじめりみやこ草さく
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十四日、磯原の濱を行く
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青田行く水はながれて磯原の濱晝顔の磯に消入りぬ
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平潟の入江の松魚船が幾十艘となく泊つて居るので陸へのぼつた水夫共が代るがはる船に向つて怒鳴る、深更になつてもやまぬ
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からす等よ田螺のふたに懲りなくば蟹のはさみに嘴斷ちて
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