の槭《もみぢ》は青き秋風に清瀧川の瀬をさむみかも

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二日、大津より彦根に渡る
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葦の邊の※[#「魚+入」、第3水準1−94−32]《いり》[#底本のルビ「いり」は「えり」か?]おもしろき近江の湖鴨うく秋になりにけるかも

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※[#「魚+入」、第3水準1−94−32]は水中に竹簀をたて圍みたるをいふ、魚とるためなり彦根城廓内
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鵯の晴を鳴く樹のさや/\に葛も薄も秋の風吹く

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天主閣にのぼる
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名を知らぬ末枯草の穗に茂き甍のうへに秋の虫鳴く

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夕、彦根を去らむとして湖水をのぞむ
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比良の山ながらふ雲に落つる日の夕かゞやきに葦の花白し

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三日、伊勢に入る
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宮路ゆく伊勢の白子は竹簾古りにしやどの秋蕎麥の花

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一身田村途上
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鵲豆《ふぢまめ》を曳く人遠く村雀稻の穗ふみて芋の葉に飛ぶ

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四日、桃澤、奥島二氏と安濃津に遊ぶ、岩田川の河口を贄崎といふ安濃津に集る船は此川に入りて錨を卸す
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安濃の津をさしてまともにくる船の贄の岬に眞帆の綱解く

贄崎の※[#「魚+是」、第4水準2−93−60]の筵ゆふかげり阿漕が浦に寄するしき浪

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五日
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伊勢の野は秋蕎麥白き黄昏に雨を含める伊賀の山近し

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六日、能褒野に至る、山陵は小なれども神さびたるに、程近き宮はあたり淋しくして形ばかりに齋きたるさまなり
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淺茅生のもみづる草にふる雨の宮もわびしも伊勢の能褒野は

秋雨のしげき能褒野の宮守はさ筵掩ひ芋のから積む

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四日市より横濱へ汽船に乘る、風浪烈しくして伊勢灣を出づる能はず、伊良胡崎の蔭に假泊す
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潮さゐの伊良胡が崎の巖群にいたぶる浪は見れど飽かぬかも

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夜半(錨を)卷く、雨全く霽れて星かゞやけり
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伊良胡崎なごろもたかき小夜ふけに搖りもてくれば心どもなし
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