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茨城は狹野にはあれど國見嶺に登りて見れば稻田廣國

國尻のこの行き逢ひの眞秀處にぞ國見が嶺ろは聳え立ちける

    松がさ集
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なにをすることもなくてありけるほど鎌もて門の四つ目垣のもとに草とりけることありけり。近きわたりの子供二人垣のもとにいよりて物もいはずしてありけり。我れ、この鎌もて汝等が頭斬りてむと思ふはいかにといへば、大きなるが八つばかりになりけるが、訝かしげなる面貌にて否といふ。我れ汝らが頭きらむといふはよきかうべにして素の形につけえさせむと思ふにこそといへば、いよ/\訝しみ駭けるさまにて命死なむことの恐ろしといひて垣のもととほぞきて唯否とのみいひけり。小さなりけるは四つばかりになりけるが、そは飯粒《いひぼ》もてつくるにやとこれもいたくおどろけるさまにてひそやかにいひいでけり。腹うち抱へられて可笑しさ限りなかりき。罪ある戯れなりかし。メンチといふものを玩ぶとて常に飯粒もてつけ合せけるよし母なるものゝきゝて笑ひつゝかたりけり。
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利鎌もて斷つといへどももとほるや蚯蚓の如き洟垂るゝ子等

みゝず/\頭もなきとをもなきと蕗の葉蔭を二わかれ行く

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秀眞子ひとり居の煩しきをかこつこと三とせばかりになりけるが、このごろうら若き女のほの見ゆることあるよしいづこともなく聞え侍れば、彼れ此れとひたゞせどもえ辨へず。その眞なりや否やそは我がかゝつらふところに非ず。我は歌をつくりてこれを秀眞がもとにおくる。秀眞たるもの果して腹立つべきか、またはうち笑ひてやむべきか、只これ一時の戯れに過ぎざるのみ、歌にいはく
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萬葉の大嘘《おほをそ》烏をそろ/\秀眞《ほつま》がやどに妻はあらなくに

ひとりすむ典鑄司《いもじ》あはれみ思へれば妻覓ぎけるか我が知らぬとに

商人の繭買袋かゝぶらせ棚に置かぬに妻隱しあへや

鷸の嘴かくすとにあらじ妻覓ぐとつげぬは蓋し忘れたりこそ

唐臼の底ひにつくる松の樹の妻を待たせて外にあるなゆめ

馬乘りに鞍にもたへぬ桃尻《もゝじり》の尻据らずば妻泣くらむぞ

粘土を溲《こ》ねのすさびにかゞる手を見せて泣かすなそのはし妻を

あさな/\食稻《けしね》とぐ手もたゆきとふはし妻子らを見せずとかいはむ

      尾張熱田神宮寶物之内七種
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