つひまに畑見えて畑のつゞきに小松原みゆ

垣の外になめて植ゑたる柿の木のうまし木の實のともしきろかも

もろこしの高穗ゆるがし畑をすぎ庭の木草に風ふきわたる
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 明治三十四年


    雪

あら山の雪にこやせる旅人あはれ 家のらばい行きて妹に告げやらましを

    海

住吉のあまにもがもな常世べのをとめが宮にゆけらく思へば

    氷

西ふくや風寒ければ網ほせる汀の葦に氷むすびぬ

氷ゐる水のそこひの白珠の目にはつけどもとりがてぬかも

    酒

いはひ瓮にうま酒みてゝうめきとふ野べのつかさは松木たれたり

    滑稽

萱刈りて畑なひらきそ麻田比古が額の片へに麥蒔かば足り

君によりなごむ心はにひ藁に包む海鼠のしかとくるごと

    橋

大王のとほのみ門と。しきます越の國内に。山はしもさはにあれども。名ぐはしその立山を。いめぐらふかたかひ河は。征矢なす水のはやけば。架けわたす橋もあらねば。さと人のいよりつどひて。かにかくに計らひけるに。その中の人の言へらく。山つみの神の命に。こひのみねぎ申して。うつそみの人の命を。そこにしも沈めてあらば。とこしへ
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