て、おひ持ちて我をい行けと、ひた走せに走せても行かむを、から臼なすふとしき君が、ほゝたぶら秤にかけ、しりたぶら秤にかけ、七はかり八はかりかけ、切りそけて我に負はしめ、負はしめもいざ、

    七月短歌會

那須の野の萱原過ぎてたどりゆく山の檜の木に蝉のなくかも

豆小豆しげる畑の桐の木に蜩なくもあした涼しみ

    露

あまの川棚引きわたる眞下には糸瓜の尻に露したゞるも

芋の葉ゆこぼれて落つる白露のころゝころゝに※[#「虫+車」、第3水準1−91−55]のなく

    青壺集

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わすれ草といふ草の根を正岡先生のもとへ贈るとてよみける歌并短歌
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久方の雨のさみだれ、おぼゝしくいや日に降れば、常臥にやまひこやせる、君が身にいたもさやれか、つねには似てもあらずと、玉梓の知らせのきたれ、葦垣のみだれて思へど、投左のとほくしあれば、せむ術もそこに有らねど、はしきやし君が心の、慰もることもあらむと、吾おくるこれの球根は、春邊はしげき諸葉の、跡もなく枯れてはあれども、鑛は鎔くる夏にし、くれなゐの花の蕾の、一日に一尺に生ひ、二日に二尺に延び、時じくに匂ひぞ出づる、忘れ居しごと、(明治三十四年夏作)

     短歌
病をし忘れて君が思はむとこの忘草にほふべらなり

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常陸國霞が浦に舟を泛べてよみける歌八首(舊作)
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葦の邊を榜ぎたみ行けば思ほゆる妹と相見の埼近づきぬ

携へて相見の埼の村松の待つらむ母に家苞もがも

沖つ邊にい行きかへらふ蜑舟はわかさぎ捕らし秋たけぬれば

白波のひまなく寄する行方《なめがた》の三埼に立てる離れ松あはれ

いさり舟白帆つらなめ榜ぐなべに味村騷ぎ沖に立つ見ゆ

かすみが浦岸の秋田に田刈る子や沖榜ぐ蜑が妹にしあるらし

さゝら荻あしの穗わたる秋風に蜑が家居に網干せり見ゆ

草枕旅にしあれば舟うけてことのなぐさに榜ぎめぐり見つ

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明治三十五年十一月十八日、筑波山に登りてよめる歌二首
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狹衣の小筑波嶺ろのたをりには萱ぞ生ひたる苫のふき萱

筑波嶺をいや珍らしみ刈れゝどもまた生の萱のまたも來て見む

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筑波山を望みてをり/\によみける歌五首
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おくて田の稻刈
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