のなりや否や疑はしきものなれば失敗に歸したるは勿論のみ、されど予はその成るべきか、成らざるべきか自ら悟らざるまでは折々に作りて見むと思ふ、晦澁卑俗なるの故を以て斥けられざれば幸なり、
[#ここで字下げ終わり]
その一
※[#「禾+魯」、第3水準1−89−48]田におり居の鴫、しぎつき人つき網もち、とほめぐりいや近めぐり、めぐれども羽叩もせず、鴫はをらずや、鴫は居れどかくれて居りと、おのれ見ゆらくを知らに、稻莖に嘴をさしいれ、さし入れてかくれて居りと、網でとられきや、
その二
おほ寺の榎がうれに、このみをばとりてはまむと、綱かけてのぼりけむや、梯かけてのぼりけむや、はしもかけずつなもかけずて、なにをしてかよぢけむぞ子や、おりこやと母が喚べど、このみはみおりてもこぬや、父がよばゞおりや、
その三
水つくや稻の朽田に、ひれふりてあそべる鮒を、筌おきてとらばよけむや、叉手さしてすくひてとらむ、しかれども叉手をさせば、田をこえてにげて行くや、畔放ちてたれかおきけむ、吾田の畔を、
その四
殖椚くにぎがしたに、芒刈るをとめ、なが刈らせこそ、春野の雉子、あすからはかくれて逢はむや、あはむやきゞす、
その五
葱つくりは灰こそよき、藁灰や粟がらの灰、黍稈の灰もこそよき、しかれども竹の灰は、まことぞも葱は枯らす、竹やくなゆめ、
その六
芋の子の子芋こそ、九つも十もよけれ、としごとに子もたるをみな、子はもたせこそ盥のそこを、一つうち二つうち、三つ四つや五つ六つうち、七つうたばとしの七とせ、へだてゝぞ子はもつらむや、八つうたば八とせや、
その七
葦邊には羽をあらふて、羽あらふてわたる棹雁、棹もちてここにおちこ、吾田のや刈束稻、馬に積み車に積み、そのあまりは朸にかけて、もて行かむに朸もがも、その棹もちこ、
その八
法林寺の佛の首は、雨もりておつればつぐ、鷺のくび木兔のくびも、かたみ換へ接がばつぎうるや、そのつぐは生麩《しやうふ》わらび粉、そくいひつのまたいせのりもあれどえつがずや、にべにかはこそ付けばとれぬもの、その膠は犢の牛の、寸涎のこりてなるちふ、まことしかなりや
その九
篠原やしぬをため、おしためて罠をつくり、しりからは籾はくはえず、さきから籾をくはむと蒿雀《あを
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