對州嚴原港にて
長塚節
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)肥料《こえ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)馬乘|脊中《せな》に
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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對州へ渡るには博多から夜出て朝着く。博多へ渡るにもさうである。汽船は荷物を主にして居るのだから客少くして我々はみじめである。何處へ行つても朝鮮といふことをいふ。釜山なども對州の人が眞先に行つてそれから壹州の人間が行つて開いた相だ。北の方へ行つて見ると面白相だが船は不便だし陸路は險惡だし病人には迚も駄目だ。丈夫の人がゆつくり歩いて居るのには屹度いゝ處である。漁で持つて居る國だから百姓は下手らしい。昨日竹敷から歸りに馬車で一緒になつた百姓が肥料《こえ》をすると稻が駄目になるから只作るのみだといふ。技手がついてゝさうなんだから驚く。伊勢蝦を自慢でフライにしてくれたが始めて見た。よく獲れる相だ。然し野菜は氣のきいたのは博多から來るさうだ。對馬の唄に曰く
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對州名物鳶に烏又も名物屋根の石
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