我が衣手の上に影あり
初春の朧月夜をなつかしみ折らむとしたる道の邊の梅
鳥玉の闇に梅が香聞え來て躬恒が歌に似たる春の夜
砥部燒の乳の色なす花瓶に梅と椿と共に活けたり
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 などいふ歌を一人もとつてない、不平、
 今週の婦女新聞を見る、「こども」欄はいつでも面白い、
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長野
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雪景色の形容              さだ子
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此間朝日山の雪景色を眺めまして私が白粉を塗つたやうであると申しましたら不二男(五歳)は『お米を撒いたやうだ』と申しました、
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といふのがある、理屈[#「理屈」に「ママ」の注記]もなければ罪もない、
 正午少し過ぎ新聞來る、茨城縣の投票結果、縣參事員をして居て月三囘も旅費を詐取して居た大久保不二が最高點で當選、正廉の士であるので父が肩を入れて運動してやつた初見八郎が落選、意外も意外だが忌々しいもいま/\しい、
 帶戸一枚隔てた表の座敷では妹が針仕事に忙しい、分家のおきよさんが手傳ひをして居る、村の内からお針子が二人、おせいとおふく、話が賑かなのでなんのこと
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