菜の花
長塚節
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)目切《めつきり》と
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)花簪を※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]して
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ぐる/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
一
奈良や吉野とめぐつてもどつて見ると、僅か五六日の内に京は目切《めつきり》と淋しく成つて居た。奈良は晴天が持續した。それで此の地方に特有な白く乾燥した土と、一帶に平地を飾る菜の花とが、蒼い天を戴いた地勢と相俟つて見るから朗かで且つ快かつた。京も菜の花で郊外が彩色されて居る。然し周圍の緑が近い爲か陰鬱の氣が身に逼つて感ぜられるのである。余は直ぐに國へ歸らうかと思つた。然し余の好奇心は余を二三日引き留めた。それは太夫の道中といふことを土産噺に見物して行かうとしたからである。其間の二三日、余はそここゝと郊外をぶらついた。何處も
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