けません、さう出して居るといくつでも切られますからと行司の注意で老人は大に足に心をとられたやうであつたがポツンといふ音と共に薙刀は面を打つた、しかしながら竹刀は既に頭上に揚つたので充分の打ではなかつたやうだつたが「充分に行つてるじやないかと薙刀は叫んだ、行司は暫く考へたがさつきから目も放たず見て居た莚の上の老人のもとへきてなにやら話すやうであつたが、兎に角いまのはかすりがあつたからいけないといふことになつた、充分ではないにしても二つまでやられたのだから相手の老人も考へざるを得ない、まだ軍扇を引かない内にしろ薙刀の手元へつけ入つて居る、薙刀が退いてはなれやうとすれば從つてつけ入る、「仕方がないぢやありませんかそれではと薙刀はぢれてきた、「どうもそれでは行司が軍配を引くわけに行きませんな、もつと離れて立ち合つて貰はなくつてはと行司が制すれども老人なか/\きかない、「いゝとも/\ずつと出ろ、なんでもいゝから飛び込んでやるんだと叫んだのは例の肝煎である、やつとのことで軍扇か引かれると老人乘地になつて飛び込んで「お面と皺枯れた聲で怒鳴つた、お面はまさしく打ち込んだのであつたが「こつちからも突きが
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