のことばはアンリを驚かした。初めのうちは、私の想像力が乱れたためにうわごとを言うのだと思いこんでいたが、同じことをしつこくくりかえしつづけるので、私の病気は実際に何か異常な怖るべき出来事から起きたものだと考えるようになった。
 きわめて遅々として、ときどきぶりかえしては友だちを驚かせ悩ませながら、私は恢復していった。外部の物を見てはじめて喜びのようなものが感じられるにいたった時のことをおぼえているが、それは、落葉が見えなくなって、窓に翳さす木々から若芽が出てくるのに気がついたのだった。たとえようもなくすばらしい春で、この季節が私の恢複に大いにやくだってくれた。私はまた、喜びと驚愕が胸中に蘇ってくるのを感じたが、こうして私の沈欝さが消え去り、またたくまに、あの致命的な情熱に取り憑かれる前と同じように快活になった。
 私は叫んだ。「ありがとうクレルヴァル、ずいぶん親切に、よくしてくれたね。この冬じゅう、君は、予定したように勉強して過ごすかわりに、僕の病室でその時間をつぶしてしまったんだね。どうしたらその償いができるだろう。僕のためにがっかりさせてほんとに申しわけもないが、かんべんしてくれた
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