あり、葡萄も劣らずたわわに実ったが、私の眼は自然の魅力には感じなくなっていた。身のまわりの光景を見すごしたと同じ感情で、私は、遠く離れていて久しく会わぬ友だちも忘れていた。私から音信がないので皆が心配していることはわかっていたし、父のことはもよくおぼえていた。「おまえが自分で楽しんでいるあいだは、わたしらのことを愛情をもって考え、ちゃんと便りをよこすだろう、ということは知っている。おまえからの便りがとぎれたら、それは、おまえがほかの義務も同様に怠っている証拠だと見てもいいだろうね。」
だから、父の気もちがどんなふうかは、よく知っていた。けれども、それ自体としては胸がわるくなりはするが、私の想像力を捉えて離さない自分の仕事から考えを引き離すことはできなかった。いわば、私の愛情に関する一切のことを、私のあらゆる性癖を呑み尽してしまった大目的が完成するまでは、先に延ばしたかったのだ。
そこで、父が、私のこぶさたを私の悪徳やあやまちのせいにしたとすれば、それは当っていないと考えましたが、私がまるきり責任をもたなくていいように思っていると考えたのも、今となってはもっともだと思っています。申し
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