の私的な態度は、公けのばあいよりももっと穏かな魅力のあるものでさえあった。講義しているうちは、そのものごしに一種の威厳があったが、自宅ではたいへんあいそのよい親切な態度になっていた。私は、クレンペ教授に語したような、自分の以前にやっていたことをこの人に話した。ヴァルトマン氏は、私の研究に関するつまらない話を注意ぶかく聞いてくれ、コルネリウス・アグリッパやパラケルススの名を耳にしてにっこりしたが、クレンペ教授のように軽蔑はしなかった。そして、つぎのように語った、「こういう人たちの疲れを知らぬ熱心さのおかげで、近代の哲学者はそのたいていの知識の土台を得ているのですよ。この人たちは、新しい名称をつけたり一貫した分類にまとめたりすることを、たやすい仕事としてわたしたちに残してくれたが、このことは、この人たちがいわば大いに光明を点ずる道具であったという事実なのだ。天才たちの労苦は、たといまちがったほうに向けられたにしても、とどのつまりは、人類の確乎たる利益になれなかったということは、いつだってほとんどありませんよ。」私は、憶測や衒いのちっともないこのことばを傾聴し、そのあとで、先生の講義は私の近
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