冒涜と思われるかもしれないにしても、消え去りはしないのだ。母は死んだ。しかし私たちにはまだ、果さなければならぬ義務があった。私たちは、ほかの者といっしょに自分の行路を歩みつづけ、死の手につかまれないでいるうちは自分を幸運だと思うことを学ばなければならなかった。
 こういう事件でのびのびになっていた私のインゴルシュタットへの出発は、ようやくふたたび決まった。私は父から、数週間の猶予をもらった。そんなに早く、喪中の家の死んだような平静をあとにして、生活のさなかに突入することは、神聖を冒涜するような気がしたのだ。私には悲しみは初めてだったが、にもかかわらずそれは私を仰天させてしまった。私は、あとに残された者の顔を見られなくなるのがいやだったし、殊に私のいとしいエリザベートがいくらかでも慰めを感じているところが見たかった。
 エリザベートは、じっさい、自分の悲しみを隠し、私たちみんなの慰め役になろうと努力した。そして、生活をしっかりと見、勇気と熱誠をもって義務を引き受け、伯父と呼び従兄と呼ぶように教えられてきた私たち親子のために、献身的に勤めた。その微笑の日光を取り戻して私たちを照してくれたこ
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