とだよ。君がその凶悪な復讐をここまで極端に進める前に、もし、良心の声に耳をかたむけて、悔恨の苛責を感じていたとすれば、フランケンシュタインはまだ生きていたはずだ。」
「笑わせないでほしいね。それじゃおれが苦悶も悔恨も感じなかったと思っているのかね。――この人は、」と、死体を指さしながら、「この人は、死んでいく時には、ちっとも苦しまなかった、――そうだ、計画の一つ一つが遅々としてはかどらない時のおれの苦しみの、万分の一ほども。おれは恐ろしい利己心に駆られていたが、そのあいだにもおれの胸は悔恨にむしばまれていたのだ。クレルヴァルの呻き声がおれの耳には音楽に聞えたとでも思うのかね。おれの心は、愛や同情に感じやすいようにつくられ、不幸のために悪徳と憎悪のほうへねじまげられた時には、激しい変化に堪えかねて、あんたなどの想像もつかぬほど苦しんだよ。
「クレルヴァルを殺してから、断腸の思いでおれはスイスへ戻った。フランケンシュタインをかわいそうに思い、その憫れみが嫌悪に変り、おれは自分がいやになった。しかし、おれの存在を造ると同時に、言いようのない苦痛まてつくりだしたこの人が、幸福になろうという望み
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