なら少しは警戒の感じを私に起させるような身ぶりで、たがいに囁きあっていた。しかし、このとき、その人たちが英語を話していることに気づいただけであった。だから私は、英語で話しかけた、「皆さん、この町はなんという所ですか。ここはどこだか教えていただけませんか。」
 すると、嗄れた声の男がそれに答えた、「そのうちにわかるさ。たぶん、あんたの気に入らない所に来たわけだよ。あんたの宿の相談に乗る者はないだろうよ、きっと。」
 私は知らない人からこんな失礼な返答を受けてひどくびっくりし、しかもその仲間たちの眉をひそめて怒った顔を見てめんくらった。「どうしてそういう乱暴な答えをなさるのです? よそ者をそんなふうに不親切に扱うのは、たしかイギリス人のしきたりじゃありませんね。」
「イギリスのしきたりがどんなのか知らないがね、悪党を憎むのがアイルランド人のしきたりさ。」
 こういう奇妙な会話が取り交されているあいだに、たちまち、黒山のように人垣が築かれるのが見えた。その連中の顔が好奇心と怒りのまじりあった表情をしていたので、私は、それが気になって、かなり警戒もしはじめた。宿屋へ行く道を尋ねたが、誰も答えな
前へ 次へ
全393ページ中297ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
シェリー メアリー・ウォルストンクラフト の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング