い血のように喜びが胸に溢れ、眼から涙がほとばしった。
私たちの気もちはなんと変りやすく、はなはだしい苦境にあってさえ、私たちのしがみつく生命への愛着は、なんと妙なものだろう! 私は着物を裂いてもう一つ帆をこしらえ、いっしょうけんめいに陸に向けて舵を取った。それは見たところ荒れた岩だらけの陸であったが、だんだん近づくにつれて、耕作のあとがすぐみとめられた。岸の近くには船が見えたので、開けた人間の住むところにいきなり伴れもどされたことがわかった。私は注意ぶかく曲りくねった岸に洽うて歩き、ついに小さな岬のむこうに突き出ている尖塔を見つけた。私はひどく衰弱した状態にあったので、いちばんたやすく栄養物を手に入れることのできる場所として、その町へ向ってさっそく舟を漕いでいった。さいわいに金は持っていた。岬を廻ると、小さなさっぱりした町と、よい港が見えたので、思いがけなく助かった喜びに胸をはずませながら、その港に入っていった。
舟をつなぎ、帆を始末していると、数人の人々がその場に集まって来た。その人たちは、私が現われたのをたいへんいぶかしくおもっているらしく、私をちっとも手助けしないで、ほかの時
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