始めはしないぞと自分の心におごそかに誓い、それから足をぶるぶるさせながら居間にひきこもった。私はひとりきりだった。この暗澹たる気分を追いはらって、胸のわるくなるような怖ろしい幻想の圧迫から救ってくれる者は、近くに一人もいなかった。
 数時間が過ぎ、私は窓の近くに腰かけたまま海を眺めていた。ただ数隻の漁船が海上に点在しているだけで、ときどき微風が、呼び交わす漁夫の声を運んできた。私は、深い深い静けさを意識したわけではないが、夜の静けさを感じてはいた。そのうちにとつぜん、私の耳に、岸辺の近くで櫓を漕ぐ音が聞え、私の家の近くで人が上陸する音が聞えた。
 二三分経ってから、誰かがそっと開けようとしているらしく、扉のきしる音が聞えた。私は、頭のてっぺんから足の先まで慄えあがり、誰が現われたかを感じて、私の家から遠くない所に住んでいる百姓の一人を呼び起したいと思ったが、よく、恐ろしい夢のなかで、さしせまった危険から逃れようとしてもできない時に感じるような、腑ぬけた感情に圧しつぶされて、その場にじっとして動かずにいた。
 すると、廊下に足音が聞え、扉が開いて、恐れていたやつか姿を現わした。そいつは扉
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