からさらに北に向って旅をつづけ、カンバーランドやウェストモアランドで二箇月ほど過ごした。すると今度は、スイスの山々に居るのかと空想しかねないほどであった。山の北側のまだ消えやらぬはだら雪や、湖水や、岩間をほとばしる流れは、私に親しいなつかしい光景であった。ここでもまた私たちは、幾人か知り合いができて、そのために私も、どうにかこうにか幸福になれた。クレルヴァルの喜びは、こんなふうで私どころのさわぎでなく、才能のある人たちと仲間になってその心が伸びひろがり、また自分より劣った者とつきあっているうちに、自分の性質のなかに、自分で想像していたよりも大きな能力と素質をもっていることがわかった。クレルヴァルは私に言った、「僕は、ここで一生を過ごせるね。こういう山の中にいると、スイスやライン河を羨むこともないからね。」
 しかし、旅人の生活というものが、喜びのさなかに多くの苦痛を蔵するものであることを、クレルヴァルも知った。というのは、感情がいつも緊張しており、何かしら新しいものを見っけては喜んで寄りかかるが、さて、ゆっくりした気分になりはじめると、それから離れ去らずにいられなくなり、新しいものにふ
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