しぎなくらいだ。
「こういう感情に身を任せながら、殺人のおこなわれた地点を去り、もっと人里離れた隠れ家を求めて、空っぽらしく見える納屋に入った。藁の上には、一人の女が眠っていたが、それは若い娘で、たしかに、わたしが持っていた肖像の婦人ほどは美しくなかったが、いやみのない顔立ちで、若さ健かさの美しさに溢れていた。おもうに、その喜びをわかつ笑顔をわたし以外のあらゆる人に見せる者が一人、ここに居るのだ。そこでその娘の上に身かかがめてささやいた、『眼をおさまし、美しい娘さん、おまえさんの恋人がすぐそばに居るよ――その男は、おまえさんの愛情のこもった眼で一目だけ見てもらうなら、命を棄ててもいいのだ。かわいい娘さん、眼をおさまし!」
「眠っているその娘が身じろぎしたので、ぞっとするような怖ろしさが全身を馳けめぐった。ほんとうに眼をさましてわたしを見たら、わたしを呪い、人殺しといって叫ぶだろうか。この隠された眼が開いて、わたしを見るとしたら、きっとそんなふうにするにきまっている。そう考えると気も違いそうになり鬼畜の心がこみあげてきた――おれではない、この娘が苦しむのだ、この娘が与えることのできるあら
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