で、フェリクスが自分の親のためにわざわざ尽してくれることを感謝し、同時に自分の運命をやさしく歎いた。
「わたしはこの手紙を写しておいた。というのは、この小屋に住んでいるあいだに、わたしは、字を書く道具を手に入れる手段を見つけたからだ。手紙はたびたびフェリクスやアガータの手に取って読まれた。お別れする前に、その手紙をあなたにあげましょう。それは、この話がほんとうのことである証拠になるだろうからね。しかし、今は、陽がもうすっかり傾いたから、そのあらましをお話するだけにしておきましょう。
「サフィーの述べたところによると、その母親というのは、キリスト教徒のアラビア人で、トルコ人に捕えられて奴隷にされたが、美貌のおかげで、サフィーの父親にすっかり気に入られ、結婚することになった。サフィーは、自由な身分に生れながらいま陥った奴隷の境涯を受けつけなかったこの母親のことを、語を強めてむちゅうで語った。母親はその娘を、自分の宗教の教義に従って教育し、マホメット教の婦人の信者には禁じられている高度の知力や精神の独立を志すことを教えた。この婦人は亡くなったが、その訓えはサフィーの心に消しがたく刻みつけられ
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