住んでいた国にじかにさよならを告げるために、インゴルシュタットの近郊の徒歩旅行に出かけてはどうかと言いだした。私は喜んでこの提案に同意した。私は運動が好きで、故国の山野をこんなふうにぶらつき歩いた時の気に入りの相棒が、いつもクレルヴァルであった。
こうして歩き廻るのに二週間かかったが、私の健康と元気はずっと前から快復していて、呼吸した健康によい空気、行く先々の自然の出来事、友との会話などで、それがさらにいっそう強められた。以前は研究に閉じこもって学友の連中ともつきあわず、非社交的だったが、クレルヴァルが私の心のよい感情を呼びおこして、ふたたび自然の光景と子どもたちの快活な顔を愛することを教えてくれた。すぐれた友よ! どんなに君は、私を心から愛し、私の心を君自身の心の高さにまで引き上げてくれたことだろう! 自分かってな研究に耽って、私の心が束縛され狭くなっていたのに、君の温厚さと愛情がついに、私の意識を暖ためかつ開いたのだ。私は、二、三年前の、みんなに愛し愛されて悲しみも心配もなかったころと同じような、幸福な人間になった。幸福になってみると、生命のない自然がもっとも喜ばしい感覚を与える
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