、私にもはっきりわかったことだが、私にうちとけて話させようと思って、私の進歩したことから科学そのものに話題を変えた。私に何ができよう。教授は喜ばせようと思ったのに、かえって私を苦しめたのだ。私には、それが、あとで私を後々にむごたらしく死に至らしめるために使う道具類を、一つ一つ念入りに私の前に置いているかのように感じられた。私は、教授のことばを聞いては身もだえしたか、感じた苦しみをあえて表には出さなかった。いつもすばやく他人の感じていることを見ぬく眼と感情の持ちぬしであるクレルヴァルが、自分がまるきり知らないのを口実にして、その話題をそらしたので、話はもっと一般的なことに移っていった。私は心から友に感謝したが、口には出さなかった。アンリが意外に思ったことは、はっきりわかったけれども、私から秘密を引き出そうとはしなかった。私も、限りのない愛情と尊敬の入り混った気もちでこの友人を愛していたのに、あの出来事をうちあけて話す気にはとてもなれなかった。あの出来事は、私の思い出のなかにはすこぶる頻繁に現われるが、それにしても、他人がそれを詳しく知ったら、もっと深刻になまなましい印象を受けるだけだ、と
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