るを得ないのである。其代り、斯うして青い物を保存して置くと、真冬の間でも、新鮮な青物を常に食膳に載せることが出来る。主として菜食主義の生活をするものには、之は必要欠く可からざる仕事であつた。
先づ、こんな風にして、兎に角、五六年の間、殆んど自給自足の生活を送つて来た。此百姓生活の日々の出来事を朦朧たる記憶を辿つて書いて見やうと言ふのだが……。諸君如何でしやう? 少しは面白そうでしやうか。何かの為になるでしやうか。兎に角、一回見本を出して、果して此狭い紙面に割込ますだけの価値があるかどうか、伺ひをたてる事に致します。
種まき
馬鈴薯が枝に成るものと思つた失敗談は、『我等』に書き、拙著『非進化論と人生』にも載せたから、此処には省略する。
種の蒔きかた。是はぞうさなさそうで、仲々六ヶしいもの。大豆、小豆、隠元の様なものは難かしいことも無いが、細かい種、殊に人蔘の種蒔は、ちよと六ヶしい、仏蘭西で某る農学校の校長さんが、「人蔘の種蒔は、此学校の先生よりは、隣りの畠の婆さんの方がよつぽど上手です」と歎息した話を聞いたが、其通りだ。
種
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