つた美的生活を廃して、真実の人間的な美的生活を打ち立てることであります。

 第三、真の自治は土民生活において徹底すること。
 その順序としてまず土地と人類との関係を述べたいと思ひますが、人類は土地とは離すべからざる関係があり[#「あり」に「(ママ)」の注記]ます。アナトール・フランスはある本に「人類は地表に現はれた蛆虫の様なものである」と書いてあります。人間といふものは地に生れ、地に生きて、地に葬られていく生物であります。どうして地表に生命が生じたかといふことは略して、地表に人間が生れてゐる事実を考へてみませう。
 人は地から離れられぬのみならず、地からいろ/\の感化を受けてをります。地から離れる時には真の美も道徳も経済も失はれてしまふのであります。
 地理的に考へてみても人が環境から支配されることは著しいものであります。山地の人と平原の人とは体の組織から形まで違つてくるのであります。山地の人は空気が稀薄であるから胸廓も広く、坂道を歩くから自然に足が曲つてきますし背も低いのが普通であります。然し平原の人は足も伸び背も高くなります。身体上においてもさうでありますから、精神上にいろ/\な
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