民生活とは真の意味のデモクラシイといふことである。
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一
人間は、自分を照す光明に背を向けて、常に自分の蔭を追ふて前に進んで居る。固より其一生を終るまで、遂に其蔭を捉へ得ない。之を進歩と言へば言へるが、又同時に退歩だとも言へる。長成には死滅が伴ふ。門松は冥途の旅の一里塚に過ぎない。
人間は、生きやう、生きやう、として死んで行く。人間は、平和を、平和を、と言ひながら戦つて居る。人間は、自由よ、自由よ、と叫びながら、囚はれて行く。上へ、上へ、とばかり延びて行つた果樹は、枝は栄え、葉は茂つても遂に実を結ばずして朽ち果てる。輪廻《りんね》の渦は果し無く繰返へす。エヴオリユシヨンといふも、輪廻の渦に現はるゝ一小波動に過ぎない。進化は常に退化を伴ふものである。夜無しには昼を迎へ得ない。日の次には夜が廻て来る。
二
人間は、輪廻の道を辿つて果しなき旅路を急いで居る。自ら落着くべき故郷も無く、息ふべき宿も無く、徒らに我慾の姿に憧憬《あこが》れて、あえぎ疲れて居る。旅の恥はかき棄てと唱へて、些かも省みる処なく、平気で不義、破廉恥を
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