自分と詩との関係
高村光太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)措《お》いて

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)随分|滑稽《こっけい》な

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)氤※[#「气<慍のつくり」、第3水準1−86−48]
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 私は何を措《お》いても彫刻家である。彫刻は私の血の中にある。私の彫刻がたとい善くても悪くても、私の宿命的な彫刻家である事には変りがない。
 ところでその彫刻家が詩を書く。それにどういう意味があるか。以前よく、先輩は私に詩を書くのは止せといった。そういう余技にとられる時間と精力とがあるなら、それだけ彫刻にいそしんで、早く彫刻の第一流になれという風に忠告してくれた。それにも拘《かかわ》らず、私は詩を書く事を止めずに居る。
 なぜかといえば、私は自分の彫刻を護るために詩を書いているのだからである。自分の彫刻を純粋であらしめるため、彫刻に他の分子の夾雑《きょうざつ》して来るのを防ぐため、彫刻を文学から独立せしめ
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