九代目団十郎の首
高村光太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)脳裡《のうり》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)風※[#「蚌のつくり」、第3水準1−14−6]《ふうぼう》
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九代目市川団十郎は明治三十六年九月、六十六歳で死んだ。丁度幕末からかけて明治興隆期の文明開化時代を通過し、国運第二の発展期たる日露戦争直前に生を終ったわけである。彼は俳優という職業柄、明治文化の総和をその肉体で示していた。もうあんな顔は無い。之がほんとのところである。明治文化という事からいえば、西園寺公の様な方にも同じ事がいえるけれど、肉体を素材とせらるる方でない上に、現代の教養があまねく深くその風※[#「蚌のつくり」、第3水準1−14−6]《ふうぼう》に浸潤しているので、早く世を去って現代の風にあたる事なく終った団十郎よりは複雑である。団十郎はこの点純粋の明治の顔を持っていて、女でいえば洗髪のおつまのような其の世代の標式といえるのである。五代目菊五郎についても素より団十
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