で、集団的情報組織の一環として、我館は東洋の一角に、そのコーナー・ストーンを、先んじて置いたというべきである。アメリカの議会図書館の姉妹図書館としての緊密な連絡は、この国際性をまことに深からしめているのである。
この冬から出発している印刷カードの全国頒布は、これも日本としては画期的な試みであって、納本制度の確立とともに、全国の図書館のカードの単一組織化がここにその緒を見ようとしているのである[#「いるのである」は底本では「いるである」]。殊に支部図書館の二十七図書館が、その威容をととのえて、刻々新しく内容を改善しつつあるのは、未だアメリカでも試みていないところの行政、立法のセクションを越えての組織化であって、この実験の成功のあかつきは、世界的成功というべきであろう。
かく考えてみると、ここに我館の未来は、図書館の歴史に照らして見て、まことに、重大なる課題を担っているというべきであろう。
我館のこの三年の動きは、それはまことに遅々たる寂けさにある。しかし、この寂かな動きの底を流れるものは、世界をあの急流の中に巻き込んでいるところの大いなる流れ、個人より集団へと移りつつある世界の流れの潮騒のしるしが、ここに今、寂かに訪れているのである。
この寂けさを、われわれは決して単なる寂けさとするべきでもなく、また断じてしてもいないのである。
底本:「論理とその実践――組織論から図書館像へ――」てんびん社
1972(昭和47)年11月20日第1刷発行
1976(昭和51)年3月20日第2刷発行
初出:「読書春秋」
1951(昭和26)年5月
入力:鈴木厚司
校正:染川隆俊
2007年11月22日作成
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