特殊の意味において「壁画」の役割りをもつように、レンズはまた他の特殊の意味において現在の壁を飾るところの光画の役割りを演ずる。建築様式にしたがって壁の意味が異なること、それにともなって光画がその意味を転ずることに深い注意を向けねばならない。
そして光の壁がすでに現在において機械的集団的被担性を乗り越えてきたようにレンズのもつ意味がまた機械的被担性を越えんとする視覚の躍進である。それは個人的天才を脱落したる集団的性格である一九三二年度を代表する一つの標準《スタンダード》である。
そして最も重要なことは、それがすでにもの[#「もの」に傍点]というよりはむしろザッヘとも称さるべき集団そのものの視覚であり神経であり、一つの行為[#「行為」に傍点]であることである。行為づけるもの[#「行為づけるもの」に傍点]、あるいはものの行為づき[#「あるいはものの行為づき」に傍点]ともいわるべき一つの集団的視覚の一標準形態となったことである。かかる視覚が構成する光の芸術はかくてまったく未来のものでなければならない。
ただそれが今、利潤形態より脱して、さらに企画的組織機構の要素として発展せんとする未来を
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