地方の青年についての報告
中井正一

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)渦流《ウィルペル》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)(一)[#「(一)」は縦中横]
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 十万の労働者が月十銭の会費で、労働文化協会を組織しているんだというと、誰でもほんとか、といって驚く。広島県ではこの夢のような組織が、十一月で一年の誕生日を迎えようとしている。
 この協会が夏期大学をやろうとして、二十一名の大学教授連を二十二カ町村へ送り込もうと計画した時は、何か私は、大海戦にでもぶつかるように腹の底で煮えるものがあった。
 計画の噂さが村から村へ伝わると、いろいろの青年が私のところへやって来た。瀬戸内海の小さな田島の漁村から二名の青年がやって来た。そして、私達の計画の中の平野義太郎、羽仁五郎をよこしてくれという。
「青年のメンバーは何人位いるんだ」「今のところ二十五名です」という。しかも、一コースの六名の講師三日間をソックリよこせといってきかないのである。少し無茶な話なのである。しかも、鰯が来襲したら聴衆はなくなるというのである。それでも、「私達漁村
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