後では、彼の命令でキリスト教徒の女子供が、獅子の群の中へ投ぜられる悲しい叫びがいつも断えなかったのである。彼はそれに耳を覆うかのように北部の討伐に出ていったのである。知識の政治よりの逃避的遊離のもたらす悲劇のなかでも典型的な類型である。
アリストテレス型[#「アリストテレス型」は太字](妥協的遊離) アリストテレスはアレクサンダー大王の教師であり、彼の政治及びその後一千年を支配した封建的機構に対して、まことに都合のよい理論を構築することに成功した人である。これは決してアリストテレス個人の業蹟というべきでなく、次の事にまた原因をもっている。それは、人間は自分で生きて経験している以外のことはなかなか理解できないということである。すなわち封建的に生きている時代にはそういう関係以外の秩序はなかなか理解できない。一人の人の命令で国家の秩序が保たれている時代には、真理は唯一つの定理のようなもので成立していて、その定理の下にすべての現象が服従していると解釈すると判りよくもあるし、その政治家にとって都合もよいし、また知識人にとっても職業にありつけて、あわよくば高位高官の禄をも食めるということとなるの
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