庁の調査業務は膨張したのみならず、次から次へと各種の国立の調査研究機関が生まれた。他面、民間調査機関は財政難になやまされるようになった。資本主義企業の利潤率が低下したので、その利潤のおこぼれで支持される民間調査機関の財源が苦しくなったのである。
 任意団体の発達を特色とするイギリスにおいても、研究や調査を自由に放任する時代はすでにすぎて、国家が科学政策をとりあげるようになった。デパートメント・オブ・サイエンティフィック・リサーチという独立の官庁が、科学研究を統轄している。これは直属の研究所を二十ももっており、主として物理、医学、農学などの分野にまたがっている。その他、政府内にカウンシル・オブ・サイエンス・ポリシイがあり、また国会内に科学者をふくむ委員会が設けられて、科学政策を計画的に推進する体制がとられている。科学的研究を工業化することを助成する公社が創設されたことも、注目に値する。
 フランスもまた、国家が科学政策をとりあげている。文部省の外局に科学研究中央局が設けられて、科学政策を統轄している。フランスでは、政府が直接に研究調査を補助する形式ではなく、例えばある業種の業者の間にセン
前へ 次へ
全20ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中井 正一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング