同様であって、一国の複雑な行政は、それぞれの事務的及び技術的専門家が各分野を担当して、歯車の一つ一つを動かして運営されている。英雄的な政治家の手腕といったものも、もしこの歯車の運転手を掌握することがなければ、花火のようなものであって、一瞬間派手な閃光をはなつにすぎないであろう。このようなわけで、行政の分野にも、経済界にも、社会事業にも、労働運動にも、各種各様の専門家ができ上った。官庁はもとより、大銀行、大産業会社、大商事会社、経済団体、文化団体、労働団体などは、それぞれ多数の優秀なエキスパートを養成して、それぞれの仕事に利用している。西洋の先進国では、早くから各種の専門家が重要視せられ、経済的にも社会的にも良い生活ができるようになった。しかも、これらの専門家は一つの社会的集団としての勢力をもつまでに成長した。これらのいわばソーシャル・エンジニーアがなければ、現代の複雑な社会は運転することができなくなっている。バーナムの『経営者革命』は、この事実を表現したものにほかならない。そして、これらの専門家の数と勢力とは、二つの大戦と一九三〇年代の世界的大不況後の経済統制の実験によって、急速に増大
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