統計資料を必要とするので、アメリカ型の統計作成業務が急速に導入された。経済安定本部をはじめとして各行政官庁は、その調査統計業務を急速にアメリカ化せざるをえなかった。かくして、少なくとも外面的には、アメリカ的機構と技術とをとり入れた調査機関体制ができ上がった。さて、その中味はどうであるか。
何よりもまず指摘せられねばならぬことは、わが国には偶像を破壊し、権威と闘った科学的精神の発達史がないことである。したがって、研究調査機関の外形はあれども、魂はない。科学的調査に立脚して政治なり事業経営なりをおこなうという空気は、まだ低調である。それを立証する最も端的な証拠は、予算縮減の際には真先に調査研究費が削られ、また機構改革の場合にも調査系統が真先に槍玉にあげられることであろう。もっとも、これは調査そのものが政治なり事業経営なりにとって、まだ充分に役に立つような形にまで進歩していないことにもよるであろう。内容的に見ても権威がないし、また時間的にも間に合わないなどの欠陥があるために、調査の重要性が稀薄になっていることもある。調査というと、研究よりも一段低級のもののように考えられ、その成果もガリ版な
前へ
次へ
全20ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中井 正一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング