大衆の知恵
中井正一
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)切り展《ひら》きつつある
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]
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私はこの雑誌の五号で「カットの文法」という文章を書いたが、あの中で私は次のように書いた。カットをつなぐのは、ほんとうは、観衆なのである。観衆が、あの場面と場面をどんなこころで、つないで見るかを頭に置いて、シナリオ・ライターも、監督も、フィルムをつないでいくのである。
フィルムには「である」「でない」の言葉がカットとカットの間にないから、小説家が勝手に書くように簡単にいかないのである。
シナリオ・ライターの悩みはここにあるのである。
シナリオ・ライターは、だから直接、大衆のこころの中に割り込んで、一緒に、シナリオを書いていかなくてはならない。
大衆のこころのどまんなかに融け込んでいなくては、うまいシナリオとはなってこないのである。
もはや、映画が、独りよがりの、個人的天才の芸術のための芸術というようなものではありえなくなりつつあると共に、この種の芸術論をでんぐりかえして、新しい天地に
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