ではない。
 それは弱いもののできることだろうか。否、その反対である。
 子供たちが、手離しで自転車を走らせてあそぶ遊びが外国にはある。
 その中の一人の子供が、たまりかねてハンドルに手をかけると、皆で、
「卑きょう者!」
 と呼ぶ。そして車はなおも狂って走るのである。
 しかし、ほんとうは、あえて、このハンドルに手を出す子供が「勇気があるもの」であり、手を出さない子供たちが、むしろ、ほんとうは卑きょう者なのである。
[#地付き]*『中国新聞』一九五一年八月



底本:「中井正一全集 第四巻 文化と集団の論理」
   1981(昭和56)年5月25日第1刷
初出:「中国新聞」
   1951(昭和26)年8月
入力:鈴木厚司
校正:染川隆俊
2009年8月23日作成
青空文庫作成ファイル:
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