集団文化と読書
中井正一
「金沢文庫」「足利文庫」などといっていたものが、「図書館」となるには、なんといっても、時代の流れを感ぜずにいられない。封建領主の財宝であり、庫の中に収められる所有物であったものから、大衆のサービスの対象となり、旅館のような、茶館のような大衆の共有物となる事は、大きな一つの変革であった。
一つの都市に、喫茶店の如く二百の図書館が散在するというアメリカの図書館は、この大衆サービスのかたちの図書館の本質的なすがたというべきであろう。アメリカには、個人が五千、六千の蔵書をもつという事は稀であるという。図書館の方に「より完全な」「より便利な」蔵書が待っているというわけである。日本は今大体それに向いつつあるのである。(ところが大学図書館などでは、生徒への開架《オープンアクセス》を禁じはじめたのは滑稽な逆行ともいえるであろう。)
このサービスとしての図書館に向いつつあるこの傾向、「文庫から百貨店のような図書館へ」の一九〇〇年代のスローガンは、五一年の段階で次の飛躍を試みつつある。C・I・E図書館が、本名はC・I・Eインフォーメイション・センターである事がそれである。そ
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