、これは絶対に必要な事となる。
 読書と本がかかる長足の進歩をしている時、出版界も決して立後れることは出来ないと思われる。日本の出版界は未だ、単一の組織体としての出版研究所なるものをもっていないが、例えばベスト・セラーズの東京から豊橋、豊橋から長崎へといった、宣伝の波動移転速度の測定といったような事はまだ試みられていないのである。
 配給網は、小売に渡したら、数カ月で、一斉に取りかえす。取りかえされた頃に、ベスト・セラーズが売れだすといったことが、未だくりかえされているのである。図書館自体が今や、購買対象の組織たらんとしつつある。この網と、新聞と、販売網でクェスチョネールの計画性をもつならば、マッス・コミュニケーションとしての読書心理の研究が可能であり、この時はじめて科学的な出版企画が、成立するのである。
 海図のない航行、これが出版界の現状である。このレーダー時代に、和寇戦法を用いているのが、今の出版界である。正にアナクロニズム時代逆行というべきであろう。



底本:「論理とその実践――組織論から図書館像へ――」てんびん社
   1972(昭和47)年11月20日第1刷発行
   
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