術論が、この二つの概念の間に苦しんでいる。この場合、スポーツのフォームの概念は深い新鮮な暗示をあたえるものである。スライディング・シェル、あるいはラグビー等の近代スポーツの内面のフォームならびに組織《システム》をもつものは、「衝動ある秩序」である。あるいは「秩序ある衝動」である。それが、今新しき時代の成長しつつあるモルフェであると共に、新しき社会ならびに芸術の形式であり組織である。
その意味で我々は単なる「秩序」であるギリシャと、単に「衝動」であるロマンティクを後《あと》に見ながらより彼方へその進路を向けている。「英雄主義《ヒロイズム》より組織主義《ユニフォーミティズム》」へ、いわば「腹より腰へ」とスポーツ自身が動いてゆくその重き推移の中《うち》にすでに感覚が生長するアイドスを育み教え導きつつあるのを知るのである。
底本:「中井正一評論集」岩波文庫、岩波書店
1995(平成7)年6月16日第1刷発行
底本の親本:「中井正一全集 第一巻」美術出版社
1981(昭和56)年4月25日発行
初出:「京都帝国大学新聞」
1930(昭和5)年5月5日、21日、6月5日
入力:文子
校正:鈴木厚司
2006年7月20日作成
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