頼のもとに個人の部署をテストするの意味である。それは必ず新しき論理学への契機であることを自分は信じている。リズムの問題も、すでにそれが歴史的立場として考察される場合、その主張にあたってもかかる形態にあらねばならぬと私は思う。それは主張が単なる個人的観念論的帰結をもっていないことへの自覚への用心である。

 7

 問題はリズムである。
 リズムが歴史性をもっていることのザッヘ的考察において、よき一つの例を私はここに提出しよう。さきにボートの例をとった。舵手の数学的拍子で漕いでいる場合、そのリズムは数学的解釈の範囲を越える必要はない。しかし、それがよき漕手の内面に立ち入って、一ストローク一ストロークのねらい[#「ねらい」に傍点]が安心のいく域にまでねらわれる[#「ねらわれる」に傍点]にあたって、そのねらうこころ[#「ねらうこころ」に傍点]のきわみにリズムの本質をもたらす場合、いわゆるその呼吸、そのイキはすでに数学的解釈を越えて、すでに人間学的、存在論的解釈を必要とするといわなくてはならない。しかし、それですでに、解釈のつかない場合が生まれてくる。例えば、それは八人なら八人が構成する一艇の
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