かた(古形)からきたと思われる「かたのよきもの」すなわち仕あわせものを意味するのは特殊の変形的使用法である。例の「ひょんな心にならんした、かた[#「かた」に傍点]の悪い梅川様…………」がそれである。「かたもなく散りはてて」は跡としてのかた[#「かた」に傍点]である。また鋳物のかた[#「かた」に傍点]があり、染物のかたがみ[#「かたがみ」に傍点]からくるのに『重井筒』の「代々伝はる紺屋の型と、共に禿げたる頭《かしら》をおろし………」などがある。
その意味するすべての内面には型[#「型」に傍点]と原存在[#「原存在」に傍点]との間の等値的射影が指示されている。写《うつ》され、移《うつ》され、覆《うつ》されている。
形式といい、様式というすべての内面には、かかるかた[#「かた」に傍点]とそれを築きあげる機構としてのうつす[#「うつす」に傍点]という現象が存在していることに気づかなければならない。
かくて私たちはかのインドのミトスを顧みて、深い示唆に教えられるところのものが多い。
現象学的意味で気分とも訳さるべき Stimmung という言葉も語原的には音響あるいは言語的意味の射影的等
前へ
次へ
全9ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中井 正一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング