慨がある。三千年が間に破滅に臨み、悲しみつつかかる時代を夢みた知識人は幾十人あったであろうか、幾百人であっただろうか。いや、知識そのものが傷み悲しんでいたともいえよう。
 しかも、今、その形をもって、眼前に、人間が、人間の秩序を整えたのである。
 勿論、現実はそう甘くはない。第二第三の『資治通鑑』が、私達の歴史の中に、惨酷な醜悪を用意をしているであろう。しかし私達は今まさに一つの人間の夢にまで辿りついているのである。この一点を手離すことは、あの長い歴史に対して申訳けないことである。
 国立国会図書館は、かかる幾つかの夢としてここに現われ出でた。これは、日本の民主化の一つの表徴であり、現議員の果たした栄誉のバッジですらある。往古、アレクサンダーがその遠征の記念としてアレクサンドリア図書館ができたように、今、ここに戦いが文化建設の機縁となったということもできよう。
 ともあれ、この日本民族の危機にあたり、この図書館がその型態を正しく整えることの急務は、正に切実をきわめている。
 一歩退いて図書館界を省みると、この一隅の世界もまた、火炎の中にあるのである。いま、『群書類従』を古本として売れば
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