がてその技術がその中の文体と共に新しきリズムとハーモニイをもつであろう。そして最も重大なことはそれが電波によって構成せられたる言葉の配列であることである。
実際、人々はすでに、自ら気づかずしてそれを観照しつつある。ワイルドが文学に対して、「芸術が人生を模倣するのではなくして、人生が芸術を模倣するのである」と云った様に我々は、「人生を新聞が模倣するのではなくして、新聞を人生が模倣するのである」と云い換えることが出来るであろう。イロニカルに云えば或る場合「戦状を新聞が現わすのでなくして、新聞を戦状が現わす」とも云えるであろう。多くはそれは一つの美わしき制作[#「美わしき制作」に傍点]ですらある。しかもそれが常に現下の事実感を――いろんな意味で――盛っている以上、将来のルポルタージュのリアリズムを約束するに充分であろう。
底本:「増補 美学的空間」叢書名著の復興14、新泉社
1977(昭和52)年11月16日増補第1刷発行
底本の親本:「美学的空間」弘文堂
1959(昭和34)年11月
初出:「大阪朝日新聞」
1932(昭和7)年1月19日〜22日
入力:鈴木厚司
校正:染川隆俊
2009年4月18日作成
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