粗生生産物は、価格において下落したと仮定されており、従って貨物はその故をもって下落するであろう。なるほどそれは下落するであろうが、しかしその下落は生産者の貨幣所得の減少を伴わないであろう。もし彼がその貨物をより[#「より」に傍点]少い貨幣に対して売るならば、それは、それを造る原料の一つが価値において下落したからに過ぎない。もし毛織物業者がその毛織物を、一、〇〇〇|磅《ポンド》ではなく九〇〇|磅《ポンド》で売るとしても、それを造る羊毛が価値において一〇〇|磅《ポンド》だけ下落するならば、彼れの所得は減少しはしないであろう。
マルサス氏は曰く、『なるほど進歩しつつある国の農業生産物に対する最後の附加は、大なる比例の地代を伴わず、そして、富める国が確実に一様の供給を得ることが出来る場合に、その国の穀物の一部を輸入するのがその国の利益になるのは、まさにこの事情の故である。しかし、もし外国穀物が国内において栽培され得る穀物より遥かにより[#「より」に傍点]低廉であり、ために外国穀物輸入のために無に帰する穀物の利潤及び地代に等しいほどである、というわけでないならば、すべての場合において、外国穀物の輸入は国民的利益とならないはずである。』――『諸基礎云々』、[#「』、」は底本では「、』」]三六頁。
この考察においてマルサス氏は全く正しい。しかし輸入された穀物は、常に、『外国穀物輸入のために無に帰する穀物の利潤及び地代に等しいほどに、』国内で栽培され得る穀物よりもより低廉でなければならない[#「より低廉でなければならない」に傍点]。しからざれば、その輸入によって何人に対するいかなる利益も取得され得ないであろう。
地代は高い穀価の結果であるから、地代の喪失は低い価格の結果である。外国穀物は、決して、地代を与える如き内国穀物と競争することはない。価格の下落はあまねく地代に影響を及ぼし、ついに彼れの地代の全部が吸収されるに至るであろう。――もしそれが更により[#「より」に傍点]以上下落するならば、その価格は資本の通常利潤すら与えなくなるであろう。資本はその時には土地を去って他の職業に向かい、そして、その時には、――その時まではそうではないが、――以前にそこで栽培されていた穀物は輸入されるであろう。地代の喪失によって、価値は、すなわち評価された貨幣価値は、失われるであろうが、しかし富は利得されるであろう。粗生生産物及びその他の生産物の合計額は増加し、その生産の便宜の増大によって、それは、分量は増加するが、価値は減少するであろう。
二名の人が等しい資本を、――一方は農業に他方は製造業に用いるとせよ。農業における資本は一、二〇〇|磅《ポンド》の年々の純価値を生産し、その中《うち》一、〇〇〇|磅《ポンド》は利潤として手許に保留され、二〇〇|磅《ポンド》は地代として支払われ、製造業における他方は単に一、〇〇〇|磅《ポンド》の年々の価値を生産するに過ぎないとする。輸入によって、一、二〇〇|磅《ポンド》を費した同一量の穀物が九五〇|磅《ポンド》を費した貨物と引換えに獲得され得、そしてその結果農業に用いられた資本が、一、〇〇〇|磅《ポンド》の価値を生産し得る製造業に転ぜられると仮定すれば、国の純収入はより[#「より」に傍点]小なる価値しか有たぬものとなり、それは二、二〇〇|磅《ポンド》から二、〇〇〇|磅《ポンド》に減少するであろうが、しかし啻にそれ自身の消費のための貨物及び穀物の量は同一であるのみならず、その製造品が外国に売られた価値と、そこから購買された穀物の価値との差額たる、五〇|磅《ポンド》が購買すべきだけの附加が、なされるであろう。
さてこれがまさに、穀物の輸入が利益であるかまたはこれを栽培するのが利益であるか、ということに関する問題である。一定の資本の充用によって外国から得られる分量が、同一の資本が吾々をして国内で栽培し得せしめる分量を超過する――啻に農業者の分前に関する分量のみならず、更に地代として地主に支払われる分量を超過する――までは、それは決して輸入され得ないであろう。
マルサス氏は曰く、『製造業に用いられている生産的労働のいかなる等量も、決して、農業におけるが如き大なる再生産を惹起すことは出来ない、と正当にもアダム・スミスによって論ぜられている』と。もしアダム・スミスが価値を論じているのであるならば、彼は正しい。しかしもし彼が、富を論じているのであるならば、――これが重要な点である、――彼は誤っている。けだし彼自身富をもって、人生の必要品、便利品及び享楽品より成る、と定義しているからである。一組の必要品及び便利品は、他の組との比較を許さない。使用価値は何らかの既知の標準によって測定され得ない。それは異る人によっては異って評価されるの
前へ
次へ
全173ページ中172ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
リカードウ デイヴィッド の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング