の下落の結果として一〇〇|磅《ポンド》が労働の労賃から節約されるならば、雇傭者の純所得は毫も害されず、従って彼は価格の下落の後もその以前と全く容易に同額の租税を支払い得るであろう(註)。
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(註)純生産物と総生産物とについてセイ氏は次の如く論じている。『生産された全価値は総生産物であり、この価値から生産費を控除したものが純生産物である。』第二巻、四九一頁。しからば、セイ氏によれば生産費は地代、労賃、及び利潤から成立っているから、純生産物はあり得ない。五〇八頁において彼は曰く、『生産物の価値、生産的労働の価値、生産費の価値は、物事がその自然的事態のままに委ねられている時にはいつでも、かくすべて同様な価値である。』全部を除くならば何も残らない。
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 すべての租税が支払われなければならぬのは社会の純収入からであるから、総収入と純収入とを明かに区別するのは重要である。国内のすべての貨物、すなわち一年間に市場に齎され得るすべての穀物、粗生生産物、製造貨物等が二千万の価値を有ち、そしてこの価値を手に入れんがためには一定数の人間の労働が必要であり、そしてこれらの労働者の絶対必要品は一千万の支出を必要とするものと仮定しよう。かかる社会の総収入は二千万であり、その純収入は一千万であると、私は言わなければならない。だがこの仮定からして、労働者はその労働に対して単に一千万を受取るに過ぎない、ということにはならない。彼らは、一千二百万、一千四百万、または一千五百万を受取り得よう。そしてその場合には、彼らは二百万、四百万、または五百万の純所得を得るであろう。残りは地主と資本家との間に分たれるであろう。しかし全純所得は一千万を超過しないであろう。かかる社会が租税に二百万を支払うものと仮定すれば、その純所得は八百万に減少するであろう。
 今、貨幣が十分の一だけ価値がより[#「より」に傍点]多くなると仮定すれば、すべての貨物は下落し、そして労働の価格は下落し、――けだし労働者の絶対的必要品はこれらの貨物の一部をなしているからである、――従って総所得は一千八百万にまた純所得は九百万に、減少するであろう。もし租税が同一の比例において下落し、そして二百万ではなく単に一、八〇〇、〇〇〇が徴収されるに過ぎないならば、純所得は更に、以前に八百万が有っていたと正確に同一の価値たる七、二〇〇、〇〇〇に減少し、従って社会はかかることによっては利得もせずまた損失もしないであろう。しかし貨幣の騰貴以後にも以前と同様に二百万が租税として徴収されるならば、社会は一年につき二〇〇、〇〇〇だけより[#「より」に傍点]貧しくなり、その租税は実際には九分の一だけ高められたことになるであろう。貨幣の価値を変更することによって貨物の貨幣価値を変更し、しかも租税によって同一貨幣額を徴収することは、かくて疑いもなく、社会の負担を増加することになる。
 しかし、一千万の純収入の中《うち》、地主は五百万を地代として受取り、そして生産の容易なるためまたは穀物の輸入によって、この財貨の必要労働原費が一百万だけ減少すると仮定すれば、地代は一百万だけ下落し、そして多量の貨物の価格もまた同一額だけ下落するであろうが、しかし純収入は以前と正確に同一であろう。総所得はなるほど単に一千九百万でもあり、そしてそれを手に入れんがための必要支出は九百万でもあろうが、しかし純所得は一千万であろう。さてこの減少せる総所得から二百万が租税として徴収されると仮定すれば社会は全体としてより[#「より」に傍点]富むであろうか、より[#「より」に傍点]貧しくなるであろうか? 確かにより[#「より」に傍点]富むであろう。けだし、その租税の支払以後にも、社会は、以前と同様に、八百万の純所得を有ち、それは量は増加したが価格は二〇対一九の比例で下落した貨物の購買に充てられるであろう。かくて啻に同一の課税が負担され得るのみならず、更にまたより[#「より」に傍点]大なる租税が負担され得、しかも人民大衆は便利品及び必要品の供給が改善され得るであろう。
 もし社会の純所得が、同一の貨幣課税を支払った以後にも以前と同じ大いさであり、そして土地保有者の階級が地代の下落によって一百万を失うとすれば、他の生産的階級は物価の下落にもかかわらず増加せる貨幣所得を得るに相違ない。資本家はこの際に二重に利得するであろう。彼自身及び彼れの家族によって消費される穀物や肉は価格が下落し、また彼れの僕婢や園丁やその他すべての種類の労働者の労賃もまた、下落するであろう。彼れの牛馬は費用がより[#「より」に傍点]かからなくなり、より[#「より」に傍点]少い出費で飼養されるであろう。粗生生産物がその価格の主要部分として
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