がかかる現金勘定によって発行されるかは、少しも真実の重要性を有ち得ないのである。
(一三〇)通貨として用いられる金銀二金属の問題について数語を費すことがおそらく必要であろうが、けだし特に、この問題は、多くの人の心において、簡単明瞭な通貨原理を混乱させるように思われるからである。スミス博士は曰く、『イングランドにおいては、金が貨幣に鋳造されて後久しい間金は法貨と看做されなかった。金及び銀の価値比例は、いかなる公の法律または布告によっても定められず、市場によって決定されるに委ねられていた。もし債務者が金での支払を申出たならば、債権者はかかる支払を全く拒絶するか、または彼とその債務者が同意し得るような金の評価で、それを受容し得たであろう。』
 かかる事態においては、ギニイ貨は、金と銀との相対的市場価値の変動に全く依存して、時に二二シリングまたはそれ以上に通用し、また時に一八シリングまたはそれ以下に通用するかもしれないことは、明かである。銀の価値のあらゆる変動並びに金の価値のあらゆる変動もまた、金貨で計られるであろう、――あたかも銀が不変であり、そしてあたかも金のみが騰落を蒙るに過ぎないかの如くに見えるであろう。かくて一ギニイ貨が一八シリングではなく二二シリングに通用しても、金の価値が変動しなかったかもしれず、変動は全く銀に限られ従って二二シリングは以前に一八シリングが有した以上の価値を有たなかったのかもしれない。またこれに反し、全変動が金にあったのかもしれず、一八シリングに値したギニイ貨が二二シリングの価値に騰貴したのかもしれない。
 もし吾々が今、この銀通貨が剽削《ひょうさく》によって削減されかつその分量も増加されたと仮定すれば、一ギニイ貨は三〇シリングに通用するかもしれない。けだしかかる削減された貨幣の三〇シリング中にある銀は、一ギニイ貨中にある金以上の価値は有たないかもしれぬからである。銀通貨をその造幣価値にまで恢復することによって銀貨は騰貴するであろう。しかし外見は金が下落したように見えるであろうが、それは一ギニイ貨はおそらく良質のシリング貨の二一と同一の価値しか有たないからである。
 もし金もまた一法貨とされ、そしてあらゆる債務者は自由に、その債務を、その負う二一|磅《ポンド》ごとに四二〇シリングの銀貨または二〇ギニイの金貨を支払うことによって弁済し得るならば、彼は、最も安くその債務を弁済し得るに従ってそのいずれかで支払うであろう。もし五クヲタアの小麦をもって、彼が造幣局が二〇ギニイ金貨に鋳造すべき額の全地金を取得し得、また同じ小麦に対して、造幣局が彼に四三〇シリング銀貨に鋳造すべき額の銀地金を取得し得るならば、彼は銀で支払うことを選ぶであろうが、けだし彼はその債務をかくの如くして支払うことによって一〇シリングの利得者となるからである。しかしこれに反し、もし彼がその小麦をもって二〇ギニイ半の金貨に鋳造されるべき量の金を利得し得、そして四二〇シリングの銀貨に鋳造されるべき量の銀を取得し得るに過ぎないならば、彼は当然にその債務を金で支払うことを選ぶであろう。もし彼が取得し得る金の量が単に二〇ギニイの金貨に鋳造され得るに過ぎず、そしてその銀の量が四二〇シリングの銀貨に鋳造され得るならば、彼がその債務を支払うのが銀貨であろうと金貨であろうと彼にとっては全くどうでもよいことであろう。かくてそれは偶然事ではない。金が常に債務を支払う目的のために選ばれるのは、金が富国の流通を行うにより[#「より」に傍点]よく適するからではなく、単にそれで債務を支払うのが債務者の利益であるからである。
 銀行の現金の兌換停止の年たる一七九七年以前の長い時期の間、金は銀に比較して極めて低廉であったために、英蘭《イングランド》銀行その他すべての債務者にとり、鋳造のためにそれを造幣局に運ぶ目的をもって、市場において銀ではなく金を買うのが、その利益に合したが、けだし彼らは金でその債務を弁済した方がより[#「より」に傍点]低廉に済んだからである。銀貨は、この時期の大部分の間、その価値が極めて削減されたが、しかしそれは稀少な程度に存在し、従って、私が前述した原理によって、その通用価値は決して下落しなかった。かくも削減されはしたけれども、金貨で支払うのが依然債務者の利益であった。もちろんもしこの削減された銀貨の量がベラ棒に大であり、またはもし造幣局がかかる削減された貨幣片を発行したのであるならば、この削減された貨幣で支払うのが債務者の利益であったかもしれないが、しかしその量は限られており、そしてその価値を保持しており、従って金が実際上通貨の真実の本位であったのである。
 それがそうであったことはどこでも否定されていない。しかしそれは、銀は造幣標準に依って量目で計算せざ
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