称を有つ鋳貨またはその鋳貨に含まれる地金と同一である。また同一の原則すなわちその分量の制限によって、削減された鋳貨ももしそれが法定の量目と品位とを有っている場合にはそれが有つべき価値で流通するであろうが、それが実際に含有する金属量の価値では流通しないであろう。従って英国造幣史において吾々は通貨がその削減と同一の比例で減価しなかったのを見出すのである。その理由は、それがその内在価値の減少に比例してその分量を増加されなかったことである(註)。
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(註)私が金貨について言うことは何であろうとすべて、等しく銀貨にも適用し得る。しかしあらゆる場合において両者を挙げる必要はない。
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 紙幣の発行においては、分量制限の原則から生ずる結果を十分に銘記しておく以上に重要なことはない。五十年後には、今日銀行の理事及び大臣が、議会ででもまた議会の委員会ででも、英蘭《イングランド》銀行による銀行券の発行は、かかる銀行券の所持者の正金または地金との兌換請求権によって妨げられてはいないから、貨物や地金や外国為替の価格には何らの影響をも及ぼさずまた及ぼし得ないと、真面目に主張したということは、ほとんど信ぜられないであろう。
 銀行の設立以後は国家は独占的貨幣鋳造権または発行権を有たない。通貨は、鋳貨によってと同様に有効に紙幣によって増加され得る。従って、国家がその貨幣を削減しその分量を制限するとしても、それはその価値を保持し得ないであろうが、けだし銀行は同じく全貨幣流通量を増加せしめる権能を有っているからである。
 かかる原則によって、紙幣はその価値を確保するために正金で支払われなければならぬという必要はなく、本位として宣布された金属の価値に従って紙幣量が調節されねばならぬことが必要であるに過ぎない、ということが分るであろう。もし本位が一定の量目及び品位の金であるならば、紙幣は、金の価値の下落するごとに、またはその結果においては同じことであるが、財貨の価格の騰貴するごとに、増加され得よう。
(一二六)スミス博士は曰く、『余りに多量の紙幣を発行し、その超過分は、金及び銀と兌換されるために絶えず囘帰しつつあったために、英蘭《イングランド》銀行は、引続き多年の間、一年八十万|磅《ポンド》から一百万|磅《ポンド》または平均約八十五万|磅《ポンド》も、金を鋳造せざるを得なかった。この大なる鋳造のために、銀行はしばしば、金貨が数年前に陥った磨損しかつ下落した状態の結果として、地金を一オンスにつき四|磅《ポンド》という高い価格で購買せざるを得ず、それをその後直ちに一オンスにつき三|磅《ポンド》一七シリング一〇ペンス二分の一で鋳貨として発行したために、かくて、かくも多額の鋳造に際し二%半ないし三%の損失を蒙ったのである。従って、銀行は何らの造幣料を支払わず、政府が当然にこの鋳造費を負担したとはいえ、この政府の寛裕《かんゆう》は銀行の出資を全然防ぐものではなかった。』
 上述の原則に基いて、かくの如くして持込まれた紙幣を再発行せざることによって、低落せる金貨と新しい金貨との全通貨の価値は騰貴し、その時に銀行に対するすべての要求はなくなったということが、私には最も明かであると思われる。
 しかしながらビウキャナン氏はこれと意見を異にする。けだし彼は曰く、『この時に銀行が負担した大なる出費は、スミス博士が想像していると思われる如くに、紙幣の不慎慮な発行によってではなく、削減された通貨の状態及びその結果たる地金の価格騰貴によって、惹起されたものである。銀行は――そう考えられるであろうが、――地金を鋳造のために造幣局に送る以外に、ギニイ貨を取得する方法を有たないから、常にその戻って来た銀行券と引換えに新鋳造ギニイ貨を発行せざるを得ず、そして通貨が量目において不足し、地金の価格がそれに比例して高い時には銀行からその紙幣と引換えにかかる量目の大なるギニイ貨を引出し、それを地金とし、そしてそれを利潤を得て銀行紙幣に対して売り、ギニイ貨の新たな供給を得んがために再びそれを銀行に戻し、このギニイ貨を再び熔解して売却するのが、有利となった。通貨の量目が不足している間は銀行はこの正金の流出を常に蒙らなければならない、けだしその時には容易なかつ確実な利潤が、紙幣と正金との不断の交換から生ずるからである。しかしながら、銀行がその時にその正金の流出によっていかなる不便や出費を蒙ろうと、その銀行券に対して貨幣を支払う義務を解除することが必要であるとは決して想像されなかったことを、述ぶべきであろう。』
 ビウキャナン氏は明かに、全通貨は、必然的に、削減された貨幣の価値の水準にまで引下げなければならぬと考えている。しかし確かに、通貨の分量の減
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